「ベア」
「ん? どうした」
「なんでもない」
ドゥナ・ロリヤックのプチグソ牧場の柵に寄りかかって何をするわけでもなく時間を潰していたベアの前に現れた司は、その隣にゆっくりと座った。
「何かあったのか?」
「何もないよ」
司はただ目の前を歩むプチグソを見るわけでもなく。空気を見つめているように瞳を揺らしていた。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
「……どうか、したんだろう?」
「してないってば」
無言のこの居心地悪い空間に耐えかね、司を見るベア。そんな彼へ司は視線をずらして、怪訝そうに呟いた。
「ただ、隣にいたいだけだよ」
悪い? と軽く首を傾げる司に、ベアは驚いて目をしばたたき……バツの悪そうに目を泳がせて、でもどこか困り顔で笑う。
「あー……いや、まったく悪くない」
また無言が続くものの、もう気にすることはなかった。
こういうの、慣れてないんだ