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こういうの、慣れてないんだ
 ...ベア&司
深みになんて、くるな。
  ...ハセヲ&カイト
乙女心を弄んだ罰だ!
  ...カイト&ブラックローズ
あなたはわたしが守るから。
  ...ミミル&司


















「ベア」
「ん? どうした」
「なんでもない」

 ドゥナ・ロリヤックのプチグソ牧場の柵に寄りかかって何をするわけでもなく時間を潰していたベアの前に現れた司は、その隣にゆっくりと座った。

「何かあったのか?」
「何もないよ」

 司はただ目の前を歩むプチグソを見るわけでもなく。空気を見つめているように瞳を揺らしていた。

「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
「……どうか、したんだろう?」
「してないってば」

 無言のこの居心地悪い空間に耐えかね、司を見るベア。そんな彼へ司は視線をずらして、怪訝そうに呟いた。

「ただ、ここにいたいだけだよ」

 悪い? と軽く首を傾げる司に、ベアは驚いて目をしばたたき……バツの悪そうに目を泳がせて、でもどこか困り顔で笑う。

「あー……いや、まったく悪くない」

 また無言が続くものの、もう気にすることはなかった。



こういうの、慣れてないんだ


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「カイト、知ってるか」
「何を?」
「The Worldの基になった話」
「……え?」

 思わず耳を疑う。そんな話題が、彼の口から聞かされるなんて思いもしなかったから。ハセヲといえばぼくの驚き様を『知らない』と解釈したのか自信満々に言葉を続ける。

「R1時代にもちょくちょく話題のタネにされてたらしいけど、知らねぇの? 基になったのはネット叙事詩、題名は『黄昏の――」

 そんなハセヲの口をぼくは両手でつぐませた。その行動に意味はない。ぼくもハセヲもThe Worldのなかのキャラクターに過ぎない。そうやって黙らされたって、プレイヤーが喋ってしまえば世界は従順にそれをデータへ変換して文字を表示する。
 だけど、ハセヲは黙ってくれた。いきなりの行動というか気迫に、戸惑ってるのかも。ゆっくり、手をどける。

「……どう、したんだよ」
「…………」

 ぼくは答えられなかった。ぼくは、全てを知ったわけじゃない。垣間見たのはほんのひとかけらの世界。それでもぼくは世界を確かに見た。一部を知って、後悔したわけではない。ただ……君は知らなくていい。核心に迫ろうとすれば世界は良くも、悪くも、それに応えようとする。
 これは、ただのゲーム――それでいいじゃないか。そうじゃなきゃ、いけないんだよ。そうだろ、ハセヲ。だから……



深みになんて、くるな。


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※LinkフライングSSS。


Xthについて@


「ブラックローズのXth……」
「あんたよりはあんまり変わったところは無いわよね」
「……」
「なぁによ、そんなジロジロ見ないで」
「……ねぇ、ブラックローズ」
「……妙に真面目な顔して、なに改まっての」
「『だーりん★』って言って?」
「…………え、……は、はぁッッ!?」
「だめ?」
「だ、だめって……べ、べつにダメでもないけど……って、ち、違う違ーうッ!……な、なん、なんでアンタにそんな、……えぇ……!?」
「えー、だめ? ミルキーグソの真似」
「…………み、るきーぐそ……?」
「そしたらう〇星やつらのラ〇ちゃんだな、と思って」
「……」
「Xthは角も生えてるし、昔からミルキーグソがなんだかブラックローズの声に似てるって思ってたんだよね。だからモノマネしてもらいたいなーと思ってたんだけど今までなかなか言い出すチャンスがなくてさ、って……え、なに刀構えて、刃先ぼくに向いてて危ない、よ、う、うわッ、え、ちょ、どうしたのっ? ストップ、ブラックロー「バカーーーッッッ!!」えぇぇえええええッ!?」



乙女心を弄んだ罰だ!


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「うりゃぁッ!」

モンスターを蹴散らし、フィニッシュ。後方に控えていた呪紋使いがゆっくりと近づいてきて、心許ない体力に見かねて、回復を唱えた。

「……ムリしすぎ」

機嫌の悪そうな声色、だけど私は笑う。司なりに心配してくれているのがわかってるから、嬉しい。

「だいじょうぶ、だいじょーぶ」
「レベルの設定高すぎるんだよ」

確かに、私たちの現在のレベルより6ほど高いエリアなので少々……いや、けっこうキツくは感じている。私は切り込みにいけばいいだけでも、司は回復にも攻撃にも加わっているので忙しいんだと思う。パーティ、二人だけだし。

でも、

「もー。大丈夫つってるっしょー? ――司は、私が守るんだから!」

そのセリフにぽかんと豆鉄砲食ったみたいな司。すぐに「……ふん」とそっぽ向いて歩きだしていってしまった。肯定もしなければ否定もしない。素直じゃないな、司は。

まぁ、そんなところも司らしいけど。


あなたはわたしが守るから!


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