NOVEL  >>  Short story  >>  SSS 
良い夢を。 *リアル捏造
  ...ベア&司
やっぱり、
  ...クビア&カイト
君も、僕も笑う。
  ...シラバス&ハセヲ
トキオが来る一分前の出来事
  ...ジーク&ミナセ(+α)
未来を繋げるオトナとして、
  ...フリューゲル&トキオ
全部、ほしい *リアル捏造
  ...バルムンク&カイト


















「どうだ?学校は」
『とくに、なんにも』
「本当に?」
『……ちょっと、嘘。やっぱり少し、居づらい』
「キツいか? 無理 はするな」
『うんん、大丈夫。がんばらなきゃ』
「頑張らなくていい」
『え?』
「言わなくたって頑張ってしまうだろうけど 、君は今まで頑張りすぎてきた。だから、肩の力を抜いて、無理をしすぎるな。逃げたっていいんだ。だってもう、君は全てから逃げはしない。立ち向 かうことを覚えた。そして現に立ち向かってる。そうだろう?」
『そう、かな』
「あぁ」
『……あの、ね……えっと、その……』
「大丈夫。ゆっくりでいい」
『……アンヌーン、読んだ。図書館にあって』
「……」
『正直よく、わかんなかった』
「 ……少し難しかったかな」
『でも読んでてワクワクした』
「え?」
『あそこのこと、思い出した』
「……」
『また、遊 びたいな。普通に、冒険したい。その、僕と、ミミルと……ベアと、また一緒に……』
「……あぁ、そうだな。また遊ぼう。普通の、たわいもない冒 険に出よう」
『……うんっ』
「なら、早く手元の仕事を片づけないとな」
『……もしかして原稿、煮詰まってる? 煙草……吸いすぎな いでね』
「うっ……精進するよ」
『……知ってる? その受け答え方はイイエって意味なんだよ』
「……そう思ってくれて構わない 」
『ダメじゃん。ふふっ……それじゃあ、時間だから切るね』
「あぁ。身体に気をつけてな」
『うん。そっちもね。……くまさん』
「ん」
『……いつも、ありがとう』
「……」
『おやすみなさい』
「……おやすみ、杏」



良い夢を。


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「リアルデジタライズ……ねぇ……」
肉体を仮想空間へ変換させるなんて、SFもいいところだ。僕の存在も、ある意味SFみたいなもんだけど 。

 まぁ、もしそれが可能になれば。
 カイトを傍においておけるだろうか。
 この腕のなかでずっと縛り付けておけるだろうか。

「ただいま〜。つっかれた〜……」
「クビア、ただいま」

 愛しい愛しいカイトとそのリアルデジタライズを成功してみせている物証オマケがグランホエールに帰ってきた。
 おかえり、とトキオに目もくれずカイトへ抱きにいくと穏やかに笑って彼も背中に腕を回してくれてぽんぽんと優しくたたく。調子に乗って頬ずりもしてみればくすぐったそうに笑い、されるがままにされてくれている。

「カイト、今僕さ、なに考えてたと思う?」
「ん?ぼくを監禁しようとか?」
「惜しいかな。とっても怖いこと、考えてたんだ」
「んー、ヒントは?」
「殺すよりヒドいかも」
「監禁が惜しくて、殺すよりもヒドいかぁ……まぁ、でも」

 いつもの困ったように照れた笑顔で、いつものように穏やかな声で、

「どんなことされても、クビアならいいよ」

 そんなこと、なんで言うかな。
――リアルデジタライズには認知外依存症なんてあるらしいが、精神が崩壊したってカイトを愛せる自信が僕にはあるけど



やっぱり、この優しくて馬鹿みたいに甘いカイトが大好きかな。


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「誓いのグリーティングカード送ったんだって?」
「……」

 カナードのギルドショップ『どんぐり』の商品補充に来ただけだったのだが、店番をしているシラバスからそんな話題がのぼるなんて予期すらしていなかったのだろう。誰から聞いたと言いたげな顔のハセヲに緑の斬刀士はにこにこ笑いながら続ける。

「どう、相手の反応」
「別に。普通」
「詳しく詳しく」
「……カードについてとか、もらってよかったのか、とか」
「ふんふん。で送ってからインして会った?」
「なんでそんな野次馬根性全開なんだ?」
「みんなに誓いのメール送ってそわそわしてるハセヲの様子をスクショも交えてリークするためにいろいろ聞いとこうと思って」
「蜂の巣になりたいらしいな」
「冗談じょーだん」

 ただの個人的な興味、と言いつつ向けられた銃口に両手を上げていた。
 お前俺を冷やかすために店番引き受けたわけじゃないだろうな、と悔しそうにぼやきつつ双銃をしまい作業に戻るハセヲに、シラバスは今思いついたとでも表現するが拳を打つモーションをとった。

「そうそう。ハセヲに言いたいこと、あるんだ」
「……なんだよ」

「ずっと君のことが好きだった」

 今までの雰囲気を払拭させるような真剣な声色が紡いだのは唐突な愛の告白。しかしハセヲは顔色一つ変えずシラバスを見つめていた。何故かといえば理由は簡単、シラバスがトークモードを囁きに変えたのだ。パーティを組まなければチャットウィンドにすら表示されない。

「僕は平凡な、頼りないいちプレイヤーでしかなかったけど、君が好きだったんだよ」

 シラバスはそれを故意に行っているのだ。なんのためか、それは、ただケジメのようなもの。

「君が抱えた重みも苦悩も知ることはできなかったけど、そんな君を少しでも支えたいと思ってたのは確かなんだよ」

 勇気の持てなかった自分の最後の勇気の鱗片。そのまま矜持を保つだけの未意味な独り言を続ける。

「君は知らないだろうけど、これからも知ることはないだろうけど」

 しかしそこには、

「僕はハセヲを愛してました」

 確かな強き想いが存在する。

 なにも知らない彼が怪訝そうな顔つきになりだしたのを察知してすぐにモードを変え、笑顔をたずさえ虚言に満ちた一言を囁く。

「おめでとう」

 何を言われるか身構えていたのかその普通すぎる祝いの言葉に肩透かしを受けてぽかんとする。そして気恥ずかしいのか視線をシラバスから背けつつ「ありがとう」と呟いた。笑顔を張り付けたままシラバスは「お幸せに」と続ければ「あぁ」と短く答えて、残酷にも幸せそうにはにかんだ。



君も、僕も笑う。


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※ゲーム版Link『Liminality』で何があったか。






「香住くん!……あ、えっと、ここではジーク、だっけ……」
「み、ミナセ。来てくれたんだな……!」
「うん。実は話したいことがあって」
「え、なに?」
「……私、やっぱり香住くんとは付き合えない」
「えぇ!?」
「好きな人ができて……」
「ど、どんな奴なんだ!? その……好きな人って……!」
「万年アロハシャツ」
「…………は……?」
「飄々としてるけど熱い心を持ってて、丸いレンズのサングラスかけたいつも甘いもの食べてるかタバコ吸ってる三十代」
「さ、さんじゅ……!?」
「聞いた話しだとバツイチで子どももいるってことらしいし、私なんて娘って感じかもしれないけど……この想いは本物なの!!」
「…………」
「確かに香住君は優しいよ、素敵だとも思う……でも、私はこの気持ちを大切にしたい!」
「……」
「……大変、徳岡さんからメール……!『事件』のお礼もかねて今度食事どうかな、だって……! もちろん大丈夫だけど、ど、どうしよう! 着ていける洋服あったかな……! すぐ用意しなきゃ……あ、香住くん、ごめん、もう落ちるね!」
「…………」
「これからもいいお友達でいてね。それじゃ」



トキオが来る一分前の出来事
こんなフラれかたしたら、そりゃあんぐらい落ち込むんではないかと。


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「……おーい少年」

 ちょっと眠いから仮眠とらせて、とトキオが言ったのはほんの五分前ほど。彼は2020年のマクアヌ中央広場のベンチにて横になっている。
 石像が数多く解放されてきているとはいえ、薄暗く淋しさと不気味な気配が入り混じったこの場所で仮眠……ではなく言うなれば爆睡していた。フリューゲルが声をかけてもまったく反応がない。

「よくもまぁ、寝れるもんだねぇ」

 彼は特殊も特殊。こうやって睡眠をとったり出店のハンバーガーを食べたりと、つまり食を欲していたりする。欲望から解放されるはずの、リアルデジタライズされたにも関わらずだ。

「……本能による防衛行為か……?」

 それは人間であろうとする本能による、あがきではないかと仮説を立ててみるが、ふと自分が研究者として彼を観察していることに気づき、メトロノームにあんな態度をとっておいていまさら研究者面とは、とひとり苦笑した。

天城丈太郎の――認知外依存症に陥った者の末路を見てもなお、トキオはこの世界にとどまり続けている。弱々しかった彼は予想以上に、予想を軽く飛び越え成長を今も続けている。
こんな人間がデータとして消滅するなんて――

「……うっ……」
「? ……少年?」
「うっ、……ッ……」
「……おい、大丈夫か!?」

 思考を巡らせていると突然、彼が苦しそうに呻いた。認知外依存症による症状もしくは発作か、と一瞬にして最悪のケースが次々脳裏によぎる。突如、トキオが目を見開き、起き上がった。胃のあたりを強く抑えつけつつ息を乱している。

「……はぁっ、はぁっ」
「少年、俺が誰だかわかるか?」
「はぁっ……フリュー……ゲ、ル……」

 意識が戻りだしたのか瞳孔の動きと焦点がしっかり合い出すのが確認できた。ひと安心して息をつくフリューゲルだったが。

「お……」
「?」
「……お前のせいだ!!」

 トキオがそう喚いたことにより頭をひねる事態に。彼も精神的に興奮していることが読み取れ落ち着かせるように両手肩を掴み、目線を同じ高さに合わせる。

「お前、……お前のせいで……!」
「落ち着け、俺が何したよ?」
「お前が……あのとき……」

 トキオは拳を戦慄かせ、目を見開いてフリューゲルを睨みつけ、腹の底から叫んだ。

シューマイの話なんてするから食べたくて仕方がないじゃないかッッ!

……沈黙した空間に、トキオの腹の虫が騒ぐ音が長く響く。

「夢にまで出たぞ!シューマイ!!」
「……」
「わけのわからないお前の食い方に感化されたなんて認めたくなくて仕方がないけど蒸籠に入った熱々ジューシーなシューマイが食べる直前に幻のよう に消えていくんだ……! それ以外にも餃子に肉まん、マーボー豆腐にそれから胡麻団子……食べようとすると消えていく中華のオンパレード! そん なの悪夢以外の何ものでもないだろ、っておいコラ、ちゃんと聞いてるのかよ!!」

 至極真面目な顔で怒っているトキオに、笑いを抑えきれず前かがみになって肩を揺らすフリューゲル。最後には吹き出すようにして笑いがもれた。涙目になりつつ、トキオの機嫌をとろうと向き直る。

「そうかそうか、そりゃすまなかったな」
「ホントにそう思ってるのかよ」
「じゃ、帰還したら好きなものたらふく食わせてやるよ」
「……フリューゲルが? 奢りで?」
「おう」

 こんな人間がデータとして消滅するなんて――惜しいと思えた。現実にはこういう馬鹿みたいに真っ直ぐな人間が必要なのだ、と。だから俺は、医学者としてでなく。




未来を繋げるオトナとして、この少年を現実世界へ還す。
(……別にいいよ、彩花ちゃんとAIKAちゃんと食べにいくから)(え〜、連れないなぁ〜少年〜。つか、両手に花なんていい思いしてんじゃん、俺もまぜて)(うざっ)


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 デスクの前できちんと座り、仕事に励む怜志。画面を見てもぼくにはさっぱりなので本当に仕事をしているかはわからないけど。

 怜志が家へ訪れてくれたのだけどタイミング悪く藤尾さんから連絡が入りこうしてパソコンと睨めっこ中だ。藤尾さんの声の必死さの度合いからしてかなり仕事がたまっているようだったので、ぼくは場所を提供した。一緒に居られれば幸せだからね。眉間にシワをよせ難しそうな顔で画面を凝視する姿にコーヒーを差し出せば「ありがとう」と笑って視線はすぐ画面へ。

……ただ一緒に居られれば幸せだけど、さ。

 仕事に缶詰状態(向こうに泊りや出張など)でほとんど一ヵ月ぶりほどの再会なのだから少しだけ不満が出てきたってしょうがないよな、と言い聞かせるように小さくため息。また視線を怜志に向ける。
 ここ最近、髪を切りにいけないほど忙しいのか首にかかるほどまで伸びた明るい栗色の髪は少し癖毛で、邪魔らしく無造作にひとつに束ねられている。普通の男性だったらひんしゅくを受けそうだが怜志はそれでサマになってしまっていてスゴいなぁなんて素直に感じた。日本人離れしているとまでは言わないがハーフとかクォーターと言われたら納得してしまいそうなほどキリッとした顔立ち。真っ正面から見据えられるだけで同性でもドキドキしてしまうほど力の強い目元。昔の近寄りがたい雰囲気は中和され性格がかなり丸くなったので女性にかなりモテる。前々からそうだったらしいけど複雑だ。
 指が勝手にその白くキレイな首筋に触れた。すっ、と人差し指でうなじから下に撫でると怜志はピクリと肩を震わせて振り返る。

「……どうした、戒仁」
「なんでもない」

 ただ無意識のことだったので本当になんでもなかったのだが、怜志は数秒ぼくを見つめてからデータを保存するとパソコンな電源を落した。ケータイも同じようにする。それを不思議そうに見ていたぼくのおでこに、キスをした。突然のことだったので目を見開いて驚くしかできないぼくを見て、くくっと喉で笑いつつ瞼や頬に何回もキスを続ける。

「寂しい思いさせたか?」
「……なんで?」
「目が『寂しかった、かまってかまって』と訴えてる」

 すごく都合のいい解釈だなと苦笑しつつ昔はそんな冗談いえるほどの人でもなかったのにと年月の長さにしみじみ。そしてその長い間を彼の隣にいられたことについての幸せを嬉しく思わずにはいられない。

「まぁ……少しはね」
「じゃ満たしてやる。どこがいい? 唇か」

 そう耳元で囁くと唇に唇をはわせ、触れるだけの物足りないキスをくれる。

「身体か」

 次にそのまま流れるように首に吸い付く。チクリとするだけの痛みはもどかしい。

「心、か」

 さらに下って胸の左側、服の上からなのに熱い柔らかさに心臓が早鐘を打つ。彼が色を放ち挑発するような視線を投げ掛けてきて、クラクラする。思考が奪われて言葉がうまく紡げず呻くようにしか答えられない。



全部、ほしい。
(やっとの思いでそう呟けば口許に綺麗な笑みをいっそう刻み)(また唇と唇は触れ合う)(次は深く 深く熱を共有し合うように濃密なキスに嬉しさから背筋が震えた)

藤尾…レキ 戒仁…カイト 怜志…バルムンク


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