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ふたりの存在意義
  ...蒼炎のカイト&アイナ
まだ私は彼と、ともにいたいから。
  ...トキオ&彩花
そう微笑み振り返りながらの、無垢なお誘い。 *リアル捏造
  ...ハセヲ&司
温かな彼女が確かに共にあるのに、
  ...司&昴
素直になれない少年少女
  ...クビア&アウラ(+カイト)


















 ねぇ、カイト。あれを謳って――

 語り手は貴女なのに、ボクにこの世界の言葉を謳えという。

 永遠に日が沈まぬこの喪失の地、聖域の祭壇前で腰を下ろし染まる大聖堂を見つめる貴女。
 座れ、とキミは隣をペタペタ叩いて訴える。その通りにすれば、貴女の青い髪がさらりとボクに流れてきた。

「……『黄昏ヲ探シ早暁ヲ辿ル影五ツ
 一人ガ影ニ縛ラレテ ソノママ帰ッテコナカッタ』」

 肩にかかる重み、熱を認識しながら記憶容量に書き込まれたテキストを読み上げる。
 かわいい声ね――と貴女がはにかむ。貴女の言おうとしていることが理解できなくて反応できずにいるボクをまた笑う。

「……『黄昏ヲ探シ朝明ヲ辿ル影四ツ
 一人ガ影ニ包マレテ ソノママ帰ッテコナカッタ』」

 ボクはどうすることもなく、そのまま続ける。
 正常に表示されないボクの声が、この世界を記した謳だけは正しく読み取れるよう表れると知った時から、貴女は何かとつけてボクを謳わせるようになった。

「『黄昏ヲ探シ真昼ヲ辿ル影三ツ
 一人ガ影ニ狙ワレテ ソノママ帰ッテコナカッタ』」

『Journey of Dusk』黄昏の旅、黄昏の詩。
……貴女が『黄昏の碑文』の次に好きだと言った謳。……好まれるような謳ではない、のに。

「『黄昏ヲ探シ薄暮ヲ辿ル影二ツ
 一人ガ影ニ魅入ラレテ ソノママ帰ッテコナカッタ』」

 この謳が、なにを語っているのか……貴女は知っているのだろうか。
『父の部屋』でこの物語を読んだのだろうか。

「『黄昏ヲ畏レ家路ヲ辿ル影一ツ
 黄昏ノ町デ 今ナオ黄昏ヲ想ウ』」

 仲間だった者の裏切り。仲間だった者達同士の闘い。
 選ぶことできず残ったひとり、黄昏を眺め、なに想う。

「『家路ヲ辿ル者
 名ヲ オグマ 黄昏ノ業』……」


 貴女は『オグマ』と自身を重ねたのか。

 あの男の目的となった貴女。あの男の枷となった貴女。

 あの男の希望にはなれても用をなすに足る存在にはなれなかった、貴女。

 謳を終えても、反応を示さない。ゆっくり腕を伸ばして長い髪をはらうと貴女の瞳は閉ざされていて、小さな吐息が等間隔に聞こえる。
 小さく身じろぎをしても微睡みに浸り、起きる気配はない。しかし、瞼が震え、頬を何かが流れた。

 ………貴女は夢を、見ているのだろうか。
 ヒトというのは夢を見るらしい。夢というのは不確かな感覚、映像などの事と教えられた。

 ボクには見れないものだから、よくわからない。

 でも、ボクにも夢が見れたのなら。
 夢の中でも、貴女を守れるだろうか。――夢の中の貴女のもとへ、駆けつけたい。


 ボクはオリジナルのコピーとしてこの世界を、女神を護ってきた。

 貴女は女神のよりしろ。女神自身ではない。
 よりしろでも、貴女は貴女。

 女神のよりしろとなった貴女を護るボクは、オリジナルのコピーではない。


 貴女がどこに行こうが。貴女がなにを選ぼうが。
 貴女を護るは、蒼炎のカイト――このボクだ。



ふたりの存在意義
(仮初めの巫女)(と)(代用品の騎士)
具+でド ツ ボ。このふたりよくないですか大好きです。


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「彩花ちゃんはR:Xプレイしないの?」

 リアルへ帰還後もフリューゲルの手引きによってリアルの外見そのままのPCでザ・ワールドを堪能するトキオは問いかける。
 病院の面会時間も過ぎて陽が沈みかけている黄昏時にふたりが歩いていた。

「……しないわ」
「なんで?」
「当たり前じゃない。私、CC社嫌いなのよ」

 確かに世話になったりもした。あの事件以降、未だに訴えを起こされていないことも踏まえれば感謝すべきでもある。
 しかしどんな理由をがあっても彩花のなかでCC社を最後まで好きになることはできなかった。

「ゲームに罪はないじゃん」
「じゃ最初に売ったソフトを、しばらくして端末移植後『完全版』と銘打ってシナリオ追加したり最初では仲間にならなかったキャラが加えられたりして発売したら、頭こない? しかもそれが『専売特許』とでもいうかのように取り扱ってるゲームで頻繁に。ユーザーなめてると思うでしょ? いくらウケるもの出したって、会社に嫌気がさして離れる人もいるものよ」
「……そ、そうかな」
「……あんたはその策略に気づいたとしても喜んで飛びつくかっこうの金づるだったわね」
「うぐっ……」

 身に覚えがあるのか足を止めて心臓あたりを押さえ込むトキオ。こんな話ししても無駄だったか、とため息を吐き出しつつそのリアクションに見向きもしないで彩花は歩みをやめない。

「ただ、オレはさ」

 そこでやっと足をとめてゆっくり振り返った。夕日を浴びた表情は彼の髪色と同じように朱に柔らかく染まった笑み。そこに少しだけのぞかせる、残念そうな顔。

「彩花ちゃんと一緒に遊んでみたかったんだよ」
「……」
「彩花ちゃんはPCじゃなかったし、せっかくなら今度は一緒に遊んでクエストとか挑戦したりしたいなぁ、って。ほら、オレも前よりは頼りがい出てきたでしょ? まだまだ強くなるけど、彩花ちゃんを守れるようになったと思ったから」

 でもまぁ仕方ないよな、と諦めたのか少しだけ肩を落として歩き出せば、彩花の横を過ぎていってしまう。

「……あんたは、変わらないわね」

 でも、本当に成長した。

 少し俯き、ぽつりと呟いた言葉。
 あんなに頼りなかった、なにも知らない無知で脆弱で兄を助けるための道具としか思えなかった少年は、どこまでもたくましく、彩花の前を歩いていた。

「ん? なんか言った?」

 お互い振り向き、対峙すれば彼の表情は黄昏により陰って見えない。でも、それでも彼は笑っていると思った。成長しても変わらないその笑顔。

「それに比べ私ときたら、意地を張ってばっかり」

なにも変われていない自分。後悔しか残らなかったあの事件。

「? なに?」
「……別に! なんでもないわよ!」

 数歩前にでれば、あどけない顔をした彼と並ぶ。変わらないけど確かに成長した彼は、導いてくれるだろう。
 動けない自分の手をひいてもう一度、一歩でも後押ししてくれる。それからは自分で歩き出させてくれる。いや、それだけじゃなくて



まだ私は彼と、ともにいたいから。


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これより下は会話文のみのギャグ?オチなのでこの雰囲気で終わりたい人はそのままお戻りを。会話文のみ。






「私、あの会社嫌いよ」
「……うん」
「でも……そうよね、ゲームに罪はないもの」
「え?」
「か、勘違いしないでよね。ただの暇つぶしよ。あんたに付き合うわけじゃ……」

ときーのかいだーんー のぼーりつめるとー♪(着信

「あ、ごめん、電話」
「……(タイミング……悪)」
「はい、……あ、リーリエ」
「(……りーりえ?)」
「え、今から?……寧々もいんだ? わかったすぐ行く!」
「(ねね……)」
「OK! 家帰ったらすぐログインするからちょっと待ってろよ」

ピッ

「今、チェロから電話でさ」
「……」
「クラリネッテもいるし、一緒にクエストどう……かっ、て……」
「………………」(ゴゴゴゴ
「……あ、れ……彩花ちゃん……なんだか、すごく、お、怒って、る?」
「……こっんのぉぉッ
「ヒィッ!?」
バァァッカトキオォォッ!
へぶしぃっ!」(拳が鳩尾に入り倒れる
「死ねッ! 爆発しろッ!」(踏みつつ歩き出す
「ぐ、ぐぉっ……ぐふっ……」
トキ彩はどうもギャグオチにしたくなる病気ということが判明←
彩花はPCは魔導士あたりかな、とか考えたけどガンガン突き進むけど打たれ弱い撃剣士とかも捨てがたいと思う。絶対、錬装士は選ばないだろうな。


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「あ、……これ」

 雑貨屋を見て回るなかで手に取ったのは磁器のマグカップ。クマのキャラクターが描かれていた。

「くまさんにそっくり」

 くまさん、とは杏の義父のことだ。ときどき『ベア』とも呼ぶが『お父さん』と言うところに遭遇したことのない亮だった。相手も気にしているふうがないし、むしろそれで満足しているようであったので追求したことはない。

「……あぁ、なんか(くたびれてる感が)似てるな」
「だよね。今使ってるマグは底の方が少し欠けてたし、買ってこうかな」

 色が何種類かあるようで「どれにしよう」と手に取り比べる杏。
 そのときどき垣間見せる女らしさが素直に可愛いと思いつつ眺めていると「あっ」と彼女の声にびくっとしてしまった。
 見とれてたことに気がつかれたのかと慌てるが、視線は別のほうに向いていた。

「このネコも、かわいい」

 さきほどのクマと同じタッチで描かれたネコのマグ。キャラクターが違うだけのそれも手に取る。だが少し思案顔したと思うと棚に戻してしまった。

「買わねぇの?」
「私のマグ、まだ使えるし……もったいないかなって」

 いつも使っている、これまた別の手書き風のネコが描かれた愛用マグをすぐに亮は思い出せた。
 かわいいんだけどな、ともう一回つぶやいて恨めしそうに見つめていたが、急に道が開けたかのように――もとから表情が少し乏しいので、知人でしかわからない程度だが――明るい表情。

「そうだ、亮くんのマグにしよう」
「……うぇ?」

 いきなり自分の名前がでてくると予想してなかったので若干、狼狽えた。

「お、俺の?」
「やだ?」
「い、いや……べつに」
「ほら、よく見ると亮くんそっくりだし」
「……(その鋭い目つきが……か?)」

 くたびれたクマに、眼光鋭いネコというなかなか個性的な絵柄のシリーズなので少し落ち込むも、考えてみれば専用のカップが家に置かれるなんてそれほど亮が馴染んできたという証拠であり、杏のマグも絵柄こそ違うがネコ。ならお揃いとなる。それはちょっと悪くない気分だった。

「じゃその代金は払う」
「いいよ。お客さんのだし。ただ……」

 そのままクマのマグも持ち一緒にレジへと足を進める。


「元値以上は活躍させたいから、ちゃんと遊びに来てね」


そう微笑み振り返りながらの、無垢なお誘い。
ミミルは『ウサギ』、昴は『ペンギン』の描かれたマグが常備されているのを知って後にちょっと落ち込めばいい。


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「司、見てください……!」

 適当なワードでたどり着いたその場所には雪原を思わせるかのように白い、一面の花畑が広がっていた。
『紅衣の騎士団』を統べていた重斧使いの少女・昴はそのイレギュラーな光景に心奪われ、ため息をひとつ。そのせいか横で呪紋使いの少年が身体を強ばらせたことに気がつけない。

 少年――呪紋使いの司は、白きその百合の花を忌々しげに見つめる。むせかえるような花の香りに吐き気がこみ上げ、苦渋の表情で歯を食いしばる。

 百合の花は司にとって死の象徴のようなものだった。うっすらと思い出される、母の葬式。棺を開ければ横たわる気味の悪いほど美しい母と、それを飾る百合の花。思い起こさせる恐怖、不安、苦しみ、悲しみ、複雑に入り混ざる表現できない想いがその匂いに導かれ心の内を掻きむしる。
 忌諱の対象であるその花が光をさんさんと受け、風の手によって揺すられ待ちかまえていた。それだけで死後の世界に迷い込んだではないかと錯覚すらしてしまう。
 幻想を振り払おうと意識を強く持とうとしたが――するり、と手から温もりが消える。

 ひゅっ――と息が詰まった。

 昴が花畑へゆっくりと、花を踏まぬよう注意を払った仕草で駆ける。
 光り輝く気高くもおぞましいそれに囲まれ、少しずつ離れていく彼女。振り向き、笑った――優しく、清らかに……それはまるで。

 死んでしまった、かあさんのように、美しい。


「――昴ッ!!」

 息を忘れていたがどうにか足を踏み入れ、必死に腕を伸ばす。すがるように、彼女を掻き抱いた。
 小柄な司よりも小さくか弱き少女を強く、強く、その腕に魂すらからめ取りように必死に。

「司……?」
「……すば、る……い、いかないで」
「……」
「……僕を、……おいて、いかない……で……っ」

 消え入りそうに切羽詰まった息づかい。昴は最初こそ驚いていたが、すぐに司の背に自らも手を回した。
 重なる鼓動。重なる温もり。それがあっても司のなか不安は消えず息を浅く繰り返す。

「……司」
「……すば……る」
「はい。ここにいますよ、司。あなたも、私も」
「っ、……すば、る……昴ッ……!」



温かな彼女が確かに共にあるのに、まだその存在を確かめようと名前を叫ぶ。
(甘くて、暖かくて、優しい声が何度も応えてくれて、ようやく)(詰めた息をうまく吐き出すことを思い出せる)


司に百合って似合うけど、大っ嫌いじゃないかな……とか思ってます。
あの匂いはどうも好きになれない。どうも強く記憶にこべりついてしまう。


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「アウラ、お待たせ」
「来てくれたんですね……!」
「『秘密の部屋に』ってメールくれただろ? もちろんだよ……で、どうかした?」
「……いえ、その」
「ん?」
「なにか用事がなければ、ダメ? ……ただ私、カイトとお話したくて」
「……そうなんだ。全然ダメじゃないよ」
「よかった!」
「でもぼくでいいの? アウラは……」

「ちょっと待った!」

「!」
「あ、クビア」
「『あ、クビア』じゃないよカイトなに了承してんの、今日は僕と一緒に欲しいアイテムがあるエリアに行くって約束したじゃないか!
お前もお前だ! カイトが僕と約束してることわかってて呼び出しただろ!」
「(ぎくっ)そ、そんなこと知らないわ。ひ、被害妄想もいいところです。突然現れて……あ、後つけてるんじゃないの!? ストーカーみたいっ!」
「(ぐふっ)ば、バカじゃないの?! 僕はカイトが此処に転送された形跡があったから来ただけで……ふ、普段だったら近づくのだって嫌気がさす!!」
「ッ! と、とにかくカイトと私はお話するの! 今決まったんだから! あなたみたいな人お呼びじゃない!さっさと出てって!」
「ッ! 先約は僕! カイトと僕でエリア行くのは決まってたことだ! だからお前こそすっこんでろ! はやく消えちゃえ!」
「嫌! ふたりでなんて絶対、絶対っ、行かせないんだから!!」
「こっちだって、ふたりっきりでなんてしゃべらせるかっての!!」
「……ふたりとも」
「カイト、私とお話ですよね!?」
「カイト、僕とダンジョンだよね!?」
「…………うん、じゃ、エリアに三人で行こうか。アイテム見つけに行って、そこでいろいろ話そう」

「「え?」」

「ダメ?」
「…………か、カイトがそう言うなら、そ、その、クビアが一緒でもいいです……」
「…………か、カイトがそう言うなら、べ、別に、アウラが一緒にいてもいいよ……」
「(ふたりとも素直じゃないなぁ)」



素直になれない少年少女


お互いカイトに嫉妬するんだけどふたりともカイト大好きだからこんなことに。
いちいち巻き込まれるカイトは苦笑、だけどつき合う。そんな関係。
……いっこうにアウラの口調が定まらない。XXXX?それとも無印メール?どっちを参考にすれば……。
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