※クビア存命のアウラは再誕……とか不明な設定ですがそれでもよければどうぞ
雪原のなかをただふたり、歩く。
魔法陣もなければBGMもない。現実の雪景色ってこんなのかもしれない、とかぼんやり思考の端で考えた。前を行くアウラの背中を追いながら。
真っ直ぐ進んでも、このフィールドでたどり着ける場所はない。此処はそういう仕様なのだ。ダンジョンに下りるか、タウンに戻るか。なのにアウラは歩き続ける。僕もなにも言わず、足を動かす。
無言のまま時は進む。アウラは『歩く』なんてモーションしなくてもいいのに、僕にあわせてなのかゆっくりとした歩調で雪の上に足跡を残していく。風景を覆う色とは違う色味の白い肌は、雪よりも滑らかで艶と輝きがある。そんな素足が、雪を踏みしめ先へと向かう様はなんだかそれだけで絵になっていて美しいけど、見てるのは苦しい。
目の前にいるアウラはもしかしたら雪でできている偽物かもしれない……なんて馬鹿らしい妄想がよぎってるんだ。ほんと、馬鹿らしいことに……それを確かめたくて手を伸ばしていたりする。
腕に触れると当たり前なのにホッとした。柔らかい肌と温もり。それから振り返り際の髪から感じられたちょっとの甘い匂い。わかっていたけど確認してしまう馬鹿らしさ。
アウラの澄んだ青い瞳が僕を射る。光の加減で紫にも見えるその宝石に見られるのは苦手だ。ずっと見ていたい欲求はあるけど、反射的にすぐそらしてしまう。
「ごめんなさい」
しかしアウラが口を開いたから、驚いて視線を戻す。薄桜色の唇はほんの少し震えている。それは寒さのせいなわけはなく……悔しさがにじみ出ているようだった。
「クビア……ごめんなさい」
瞳を伏せて、吐き出すか細い息に乗せた声は白に染まっている。どんな表情も、声も、アウラは綺麗でしかない。作り物めいた、綺麗さ。
それは当然で……僕らは『ハロルド=ヒューイック』に創られたんだから。
望まれた『アウラ』となった彼女。光輝く子。
「私……目覚めなければ……」
それが僕になんで謝るんだ、と思えば……そんなことか。察しがついた。
だから僕の口元が自然と……そう、作り物めいた笑みに、歪んだのがわかった。
「かあさん……消えずに」
彼女の喉元に手を伸ばして、力ずくで押し倒した。
アウラは急なことに対処できず、柔らかい雪を少し舞い上げて尻餅をつく。そしてゆっくりと、突っ立ったままの僕を見上げる。
綺麗な瞳。綺麗な顔。綺麗な心。綺麗な、君。
きれいすぎて、そばにいたくない。
きたないぼくが、うきぼりになるから。
きれいなきみの、となりはふさわしくないことをいしきしてしまうから。
――現実の雪は雲の中に蓄えられたゴミが混じっているから見た目とは裏腹に汚いらしい。
それに比べ此処の、ザ・ワールドの雪は綺麗だ。なにも混じりない、ただのデータで構築されたグラフィック。
「……クビア……?」
「本当だよ。お前なんか目覚めなければよかったのに」
『アウラ』なんて、目覚めなければよかった。
ハロルド=ヒューイック……『お父さん』の望んだ子なんて、再誕しなければよかった。
アウラは現実の雪みたいになればよかったのに。見た目だけそのままに、心をもっと汚して、汚して、汚して、目覚めればよかったのに。
それこそ……モルガナ――『お母さん』が望んだように。
バタン、と受け身もろくにとらずにアウラの横にそのままうつ伏せに倒れた。
真っ白な雪が視界を覆う。アウラは見えない。どんな表情してるだろう……傷ついたかな。
僕自身の中から溢れ出る不快なものを雪の冷たさのせいにして紛らわす。凍えることはないけど、痛い。頭が、全身が、胸の奥が、ヒドく痛い。
アウラが動いたふうに感じて、頭を少し気づかれない程度にずらして様子をうかがった。
彼女も雪の上に倒れている。そのまま仰向けに寝転び、瞼をおろした。長い睫毛の影が濃く落ちる。
ごめんなさい。
唇だけが微かにそう動いた。誰へ対しての謝罪なのか。僕にか、もしくはお母さんにか、それともお父さんになのか。
どれでも、何も変わらなんだけども。
だから知らないふりをして、僕も瞼を閉じた。
触れあうこともせずただ雪の中に身を委ね、僕らは冷たさを享受する。
(互いの苦しみを許容しないまま)(そんなふたりに雪は、ありのままに降り注ぐ)
本当は素足なアウラ様を見かねてクビアさんが荷物持つみたいにアウラ様を肩に背負って歩き、そしてぞんざいに投げ落とすとか妄想したんだけど……クビアさんのたっぱが……。残念……。
そしてXXXXだとアウラ様が靴はいてたことに書いてから気がつく。ゼフィ素足だからアウラ様もかと……と修正もせずそのままですけど。
純粋なアウラ様はもちろん大好きだけど真っ黒なアウラ様が定期的に欲しくなるんです。つまりクビアさんの願望は私の願望です←