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ハロウィンの没ネタ
 ...カイト&ブラックローズ
恋愛中毒患者
 ...ハセヲ→カイト
それに、ね、
 ...ハセカイ
触れあうこともせずただ雪の中に身を委ね、僕らは冷たさを享受する。
 ...クビア&アウラ
彼女が死に逝く悲鳴
 ...ハセヲ&カール(+アトリ)



















「ブラックローズ、ごめんちょっと手伝って」
「どうかした?」
「帽子かぶるとウイッグがズレちゃってさ」
「私みたいにエクステにすればいいものを……貸してみなさい!」
「……まさかこんなことになるなんてね」
「まったく。誰よハロウィンをコスプレイベントと勘違いしてんのは? それもこれも『クワンタムの宣伝を手伝ってほしい』なんて依頼をトキオがホイホイ受けるから……」
「そこはぴろしを通して依頼してきた上の人に文句言うべきだと思うけどね」
「トキオは頭数揃えでトービアスの格好してるし、似合わないって思いっきり爆笑しといたから許してあげるけど」
「バルも悲惨だよ、社員だし断れず羽根むしられて……あの後ろ姿は生きる屍だった」
「唯一ノリノリなのはぴろしAct2だけよね。他のトービアス組は他萎れてるし、サクヤ組はなんだか悲壮感漂ってたわよ、しゅー坊とか」
「シューゴくん、よくOKだしてくれたよ。最初すっごく嫌そうだったのに」
「……そりゃ、あんたが引き受けちゃったし断るわけにいかないでしょ」
「え? なんで?」
「なんでって……先輩のあんたがヘソ出しツインテールの女装するのに後出のしゅー坊……シューゴがしないわけにいかないの!」
「誰かがやらなきゃいけないわけだし……トキオも困ってたから協力しなきゃと思って、つい」
「妹のレナも了承しちゃってたし。あの子は優等生だから断れなかったんだろーな……」
「で、後輩がしてブラックローズ先輩がしないわけにはいかないと」
「……まぁ私はポニテぐらいでそのまんまだし断ることあれもないから」
「あとは……水の抵抗とか」
「こらっその話をだすなっ!」
「ははっ、ごめんごめん」
「もう、まったく……ミミルは同型PCってだけで巻き込んでるもん、アタシも協力しなきゃ」
「葬炎くんと回ってるはずだけど大丈夫かな? 彼、悪い子じゃないんだけど、誤解受けやすいから……」
「ある意味あのサクヤは迫力だったわ……つーかあれ宣伝になる? アイツ『アニマル−』付いてるけど『PC−』になりそうな威圧感。まぁミミルはそのへんあとで労うことにして……ほい、ウイッグと帽子、こんなもんでどう?」
「うん、ありがとう。ズレたりしたらよろしく」
「はいはい」
「……」
「……なによ、ひとの顔じーっと見て。マナー違反よっ、なんてね」
「懐かしいなー。いや、あれから長いよね」
「あれから?」
「ぼくたちの冒険からもうすごく経ってるんだなー、とか思ったら感慨深いだろ」
「年寄りくさいわねぇ」
「ぼくとブラックローズの相棒歴もそれに比例して長いし」
「そーね」
「最初に会えたのが、相棒になれたのが本当にキミで嬉しいなぁーっと思えるんだ。ありがとう、ブラックローズ」
「……それ、アタシのセリフでもあるけど。付け加えるなら、これからもずっとよろしく、カイト」
「……うん!」
「……さーて、そろそろ待たせてる脱・羽根男のところ行って、さっさとこの依頼を終わらしましょ」
「そうだね」
「今日ヘルバ姉さんと欅がグランホエール内改装してパーティするって言ってたし。間に合うように帰らないとね。フォローよろしく、相棒」
「こっちも頼んだよ、相棒」
・一組目
カイト・ブラックローズ・バルムンク
・二組目
シューゴ・レナ・ぴろしAct2
・ 三組目
葬炎の騎士・ミミル・トキオ

三組目哀れ←
これとサクヤ・メアリ・トービアスでを加え宣伝に回る、というよくわからない妄想。やっぱりハロウィンネタではなく、ただコスプレネタ。


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※ハセ→カイ。亮さんしか出てない。付き合ってない頃イメージ。




『お疲れ、課題終わりそうか?』


「……」

 ケータイと睨めっこを経て見事俺は負けた。電源ボタンを連打してメール画面を閉じるとベッドのほうへと放り投げ、椅子に深く寄りかかる。

 ゼミの課題が終わりそうにないからしばらくザ・ワールドに来れなそうなんだ。ごめんね。
 そう言っていた一昨日。その時だって予定が押してるいっぱいいっぱいだったろうにあの世界に顔見せに来てくれたはずで、俺は急いでカイトを追い返した。無理してもどうってことないよ、とけろり笑っているアイツだろうから。
 それがいまさら悔やまれる。

「……昨日一日で終わりの目処が立つわけねぇよなー……」

 すぐさまケリのつくようなものじゃないから、自分に来れないと言ったわけで。見慣れた天井を仰ぎながら自身を非難するようにぼやいてみた。二日間連絡がないだけでこんなにも心がざわめいてるって、どうなんだ俺。
 ひとりでいるのはそれほど苦じゃないと思っていたのに。そういう状態に強いと自分では確信していたのに。

「カーイートー……」

 小さく呟く。頭のなかで「なに?」と微かに笑う声。脳みそは即座にあの声色をリピートできた。机の上のパソコンでメーラーを送受信。新着件数、0。

 ため息がもれた。この十五分内に何度新着確認しただろう。バカだ。

 せめてメールだけでも。でもそれすら負担になったらどうする。集中力切らしたら申し訳ない。

とかなんとか正当化して言い訳しるが本当は、メールを出して返信を待つ時間に耐えられそうにないだけだ。
 なんて女々しく弱いんだろう、と椅子から立ち上がって顔を洗おうと洗面台まで行く。
 目の前にある鏡を見てもっとヘコんだ。自分で見てわかるほど、情けない面が俺の顔に貼り付いてた。
 昔から両親が家にいないことを嘆いていた慣れるまでの短い期間だって、こんな泣きそうな顔ではなかったというのに。

 壁に寄りかかって、ずるずると座り込む。せめて何にしてるのか知りたい。何を思ってるのか、何を見てるのか、どこにいるのか。声が聞きたくて目を閉じ、カイトを思い浮かべる。

「ハセヲ」と笑いながら手を振るアイツに少し癒やされ、

 ヒドく切なくなった。





恋愛中毒患者
(この治らない病気に)(早く、君という薬をください)
付き合っててもカイトさんは寂しさに鈍感で(その感情を紛らす方法を知っているので)たぶんメールとか極端に少なそう。ハセヲさんは心理的には猛アピールしたいけどできない。メールとかは大胆。普段は淡泊。そんなイメージ。


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※女装とかあります。注意。




 JUDGMENTォォォォオッ!!

 いきなり彼が鬼の形相よろしく双銃ぶっ放してくるなんて思いもしなかった。
 目標のバルムンクは危険を察知してさっさと転送リングに包まれ行ってしまう。さすがフィアナの末裔。退き際も心得てる……って誉めた方がいいところ?
 そんなひとでなしな友人を見送るしかないなんてため息がでる。彼なんて盛大に舌打ちした。視線で人が殺せるなら今の目つきは凶器そのものだ。
 とりあえずそんな彼には刃向かわない方がいい……というのは重々承知のことで。ぼくはグランホエール内を彼の、ハセヲの肩に担がれて移動してる。荷物を肩に乗せて運んでるみたいにぞんざいで、いろいろ危ない体勢なんだけど、どうしたもんかな。さっきからすれ違う団員たちが必ず振りかえる。……見せもんじゃないんであんまり見て欲しくないなぁ、なんて苦笑してみるが、もしぼくが第三者の立場だったら同様に振りかえっているだろうから強くは責められないのだけれども。

 到着したのは『イバラの部屋』だった。ここなら雰囲気からか滅多に人はこないしちょうどいいといえばそうだけど、ぼくにはいろいろピンチ。
 会話の主導権を握ろうと先に話し出そうとしたらベッドに勢いよく落とされた。衝撃だけで痛みとかはほとんどないが言葉に詰まって、その隙にキスされた。荒い粗い口づけ。相当怒ってる。まいったな、と思いながらちょっと抵抗しつつ受け入れる。

「……なんでそんな格好してんだよ」

 やっと唇を離してくれたと同時にしゃべってくれてホッとした。
 今ぼくはお恥ずかしいことにメイド服なるものを着ている。ぼくの性別で給仕という点でみれば執事とかの方が正しいはずだけど、それを無視したスカート姿。丈は膝上五cmほどで男のぼくからしてちょっと心もとない。

「バルがイベントの景品のコスプレセットを新作出したいからつき合ってくれって言われて」
「なんでカイトが着るんだよ」
「女の子に着せたらそれこそアレだろ?」
「男に着せるほうがコアだ」
「まぁぼくもそうは言ったんだけど。バルとしては変人と言われるのは大丈夫でも変態扱いされるのはちょっと気が引けたらしいくて」

 そして締めくくりに「カイトなら誰もが許す」と爽やかな笑顔で言われた。どこからの漲る自信なんだろう。とりあえず頭下げられてしまったし、断言されては仕方がない。服を着替えるだけだと割りきって了承した。

「そんなことあの部下にやらせろよ」
「レキは早々に感づいて逃げちゃったらしいから」

 そのへんはさすが伊達にバルの下で働いてないな、と感服さえ覚える。

「他になに着た?」
「ん、えーと……チアガールとナース服とセーラー、ブレザー、あと昔流行った着ぐるみパジャマって知ってる? それ……ぐらいかな」
「……へんなこと、されてねぇよな?」
「まさか。バルは友だちだよ」

 スクリーンショットを隠れて撮られていたことには気づいてたけど、言わないでおこう。もうだいぶ落ち着いてくれているのにまた頭に血が上られたら大変だ。

「……そういうこと、あんま軽く引き受けんな」
「ごめん」

 ハセヲに見つかったらなんて言われるかな、とか考えはしたけど、あんなブチ切れられるなんて仮定の範囲ですら想像できなかった。そのへんはぼくの配慮不足。素直に謝るしかない。

「……ダメだ。ただじゃ許さねぇから」

 ちょっとすねてる表情が子どもっぽくて無条件反射で頬が緩んだ。それを見てキッとぼくを睨む。バルムンクのときとは明らかに違うから怖くはないけど素直に「じゃあ、どうすればいいの?」と問うた。

「罰として今日一日は俺に従うこと、ご主人様って呼ぶこと。それから夜は……わかってるよな?」

 少し考え込んでの返答。予想はできた答えだったけど、先ほどとは違う艶のある瞳の色がぼくを射抜いてきて、チリチリと小さいけれど確かな欲が胸を灼く。

「……それ罰じゃないと思います、ご主人様」

たまらず、ごまかすように声に乗せた言葉。……うん、やっぱりちょっとは恥ずかしかった。頬に血が集まるのがわかる。目の奥がぼんやりと熱くなって痛い。

「んじゃあ、追加で今後そのコスプレセット押収して着せるからプレイに応じること」

 異論は認めねぇよ、余裕を取り戻してにんまり笑いながら追加要求。否定権がないのは明白。
 でもいいんだ、ハセヲがそれで機嫌直すなら。





それに、ね、
(ハセヲとの、その……あれも嫌いじゃないから)(サービスもときには必要、ってことで)
カイトさん、もうちょっと慌てふためかすべきなのか。いやいやうちのカイトさんはこんな子、という味でどうかひとつ(ひとりごと
もうちょっと動いてくれてたんだけど、くどいし、長いし、と自主規制。


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※クビア存命のアウラは再誕……とか不明な設定ですがそれでもよければどうぞ





 雪原のなかをただふたり、歩く。
 魔法陣もなければBGMもない。現実の雪景色ってこんなのかもしれない、とかぼんやり思考の端で考えた。前を行くアウラの背中を追いながら。

 真っ直ぐ進んでも、このフィールドでたどり着ける場所はない。此処はそういう仕様なのだ。ダンジョンに下りるか、タウンに戻るか。なのにアウラは歩き続ける。僕もなにも言わず、足を動かす。

 無言のまま時は進む。アウラは『歩く』なんてモーションしなくてもいいのに、僕にあわせてなのかゆっくりとした歩調で雪の上に足跡を残していく。風景を覆う色とは違う色味の白い肌は、雪よりも滑らかで艶と輝きがある。そんな素足が、雪を踏みしめ先へと向かう様はなんだかそれだけで絵になっていて美しいけど、見てるのは苦しい。

 目の前にいるアウラはもしかしたら雪でできている偽物かもしれない……なんて馬鹿らしい妄想がよぎってるんだ。ほんと、馬鹿らしいことに……それを確かめたくて手を伸ばしていたりする。
 腕に触れると当たり前なのにホッとした。柔らかい肌と温もり。それから振り返り際の髪から感じられたちょっとの甘い匂い。わかっていたけど確認してしまう馬鹿らしさ。
 アウラの澄んだ青い瞳が僕を射る。光の加減で紫にも見えるその宝石に見られるのは苦手だ。ずっと見ていたい欲求はあるけど、反射的にすぐそらしてしまう。

「ごめんなさい」

 しかしアウラが口を開いたから、驚いて視線を戻す。薄桜色の唇はほんの少し震えている。それは寒さのせいなわけはなく……悔しさがにじみ出ているようだった。

「クビア……ごめんなさい」

 瞳を伏せて、吐き出すか細い息に乗せた声は白に染まっている。どんな表情も、声も、アウラは綺麗でしかない。作り物めいた、綺麗さ。
 それは当然で……僕らは『ハロルド=ヒューイック』に創られたんだから。
 望まれた『アウラ』となった彼女。光輝く子。

「私……目覚めなければ……」

 それが僕になんで謝るんだ、と思えば……そんなことか。察しがついた。
 だから僕の口元が自然と……そう、作り物めいた笑みに、歪んだのがわかった。

「かあさん……消えずに」

 彼女の喉元に手を伸ばして、力ずくで押し倒した。
 アウラは急なことに対処できず、柔らかい雪を少し舞い上げて尻餅をつく。そしてゆっくりと、突っ立ったままの僕を見上げる。

 綺麗な瞳。綺麗な顔。綺麗な心。綺麗な、君。

 きれいすぎて、そばにいたくない。
 きたないぼくが、うきぼりになるから。
 きれいなきみの、となりはふさわしくないことをいしきしてしまうから。

 ――現実の雪は雲の中に蓄えられたゴミが混じっているから見た目とは裏腹に汚いらしい。
 それに比べ此処の、ザ・ワールドの雪は綺麗だ。なにも混じりない、ただのデータで構築されたグラフィック。

「……クビア……?」
「本当だよ。お前なんか目覚めなければよかったのに」

『アウラ』なんて、目覚めなければよかった。
 ハロルド=ヒューイック……『お父さん』の望んだ子なんて、再誕しうまれなければよかった。

アウラは現実の雪みたいになればよかったのに。見た目だけそのままに、心をもっと汚して、汚して、汚して、目覚めればよかったのに。
 それこそ……モルガナ――『お母さん』が望んだように。

 バタン、と受け身もろくにとらずにアウラの横にそのままうつ伏せに倒れた。
 真っ白な雪が視界を覆う。アウラは見えない。どんな表情してるだろう……傷ついたかな。
 僕自身の中から溢れ出る不快なものを雪の冷たさのせいにして紛らわす。凍えることはないけど、痛い。頭が、全身が、胸の奥が、ヒドく痛い。

 アウラが動いたふうに感じて、頭を少し気づかれない程度にずらして様子をうかがった。
 彼女も雪の上に倒れている。そのまま仰向けに寝転び、瞼をおろした。長い睫毛の影が濃く落ちる。

ごめんなさい。

 唇だけが微かにそう動いた。誰へ対しての謝罪なのか。僕にか、もしくはお母さんにか、それともお父さんになのか。
 どれでも、何も変わらなんだけども。
 だから知らないふりをして、僕も瞼を閉じた。





触れあうこともせずただ雪の中に身を委ね、僕らは冷たさを享受する。
(互いの苦しみを許容しないまま)(そんなふたりに雪は、ありのままに降り注ぐ)
本当は素足なアウラ様を見かねてクビアさんが荷物持つみたいにアウラ様を肩に背負って歩き、そしてぞんざいに投げ落とすとか妄想したんだけど……クビアさんのたっぱが……。残念……。
そしてXXXXだとアウラ様が靴はいてたことに書いてから気がつく。ゼフィ素足だからアウラ様もかと……と修正もせずそのままですけど。
純粋なアウラ様はもちろん大好きだけど真っ黒なアウラ様が定期的に欲しくなるんです。つまりクビアさんの願望は私の願望です←


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「ハセヲさんがキャラ作成の時にイメージしたのってどんな感じでしたか?」
「……」

 問いかけの先には白銀の髪に紅い目、全身を白に覆った『死の恐怖』と呼ばれているPC・ハセヲ。
 唐突なそれを少し怪訝そうな目で見つめ返す。慣れない者がその視線に捉えられると軽く竦んでしまうものだが、ニコニコとまったく気にすることなく呪療士の少女アトリは答えを待つ態勢でいる。

「……なんで」
「Xthになってすっごくイメージ変わったじゃないですか。黒主体の……このThe Worldを始めた時ってどんな感じだったのかなぁー……なんて」

 嬉々として訊かれるようなことでも何ともないと思うのだが、アトリは楽しそうに言う。そんなアトリに意見するのは己の疲労感を増させるだけということを彼は今までの経験上、熟知していてハセヲは彼女のペースに乗るほうが賢明だと判断する。

「……最初は『なんとなく』」
「なんとなく、……ですか」

 首をかしげながらオウムのように聞き返してくる少女。その姿は緑が鮮やかな文鳥の方が似合う――なんて、ぼんやり頭の隅でハセヲは思っていた。

 別の誰かの存在を、強く感じながら。

「でも、最近になって、もっと違う何かがあるってことがわかった」

 アイツ――スケィスを、死の恐怖を受け入れてから。

「え! じゃ、どんな……!」
「初恋の人」

 アトリ完全静止。言葉も詰まり、笑顔がひきつる。アニメとかであれば石化したみたいなエフェクトでもかかるような大げさで、しかし彼女に心中を的確に表わしたリアクション。

「……へ?……ぇ……?」
「その反応は俺の『キャラ』じゃないと言いたいのか?」

 いえ! そんなんじゃ……!とあたふた降参するように両手をあげて弁解しようとする彼女。ハセヲを別段に気にするでもなく軽く息を吐いただけだった。

「っても、似てるのは髪と服の色ぐらいだな。服もあれは群青色だったし」
「……それって……この世界の人のことですか?」

 この世界、そうThe Worldにいた『彼女』。
 銀色の髪なんてリアルにそういないだろ? と肩をすくめつつ呆れたふうにハセヲは付け足す。しかし彼の目にアトリは少し怯えていた。遠い昔を懐かしみつつも悲しみをふくんだとても冴えた、瞳。――それは想い人を見つめる目には見えなかったのだ。

「まぁ、でも……違う……いや、そうでもあるのか」

 ハセヲの曖昧な言葉にアトリは困惑を隠せない。アトリが知るはずはない。R:2ではない。R:1の、この世界。あの時代に起こった悲劇を。

「……会いたいな……やってんのかな……いや、きっといないだろうな。いたとしても、俺が『彼女』だなんてわかんないだろうし、たぶん俺も『彼女』だなんて気づけない」

 自虐的に微笑む姿が痛々しくて、アトリの表情は自分が斬り刻まれたわけでもないのに歪む。

「……いったい、何があったんですか?」

 これ以上訊いてしまえば彼を追いつめると感じていたが、そう問いかける言葉しか絞り出せなかった。ハセヲは目を細めて、笑みを消した。悔いを告げる罪人のように重々しい声色で呟く。

「馬鹿な加害者こどもと不憫な被害者こどもが出会った……それだけだ」

そう言い終えると右手を見た。視覚にはただ掌が映される。碑文使いであるハセヲには味覚がある。臭覚はこの世界の香りを捉え、聴覚はただ淡々と流れるBGMを拾う。

 しかし再生させるのはあの頃――自分ソラという存在が『世界』にあった時のこと。

 石のように武骨で脈打つように光の帯が浮かび上がっては鎮まる、人間のものではない異質な腕。口の中は渇いて埃と胃液が混ざりあったような味が広がり、今倒れゆく長い髪から漂う甘い香りが対照的に鼻につく。

 もっとも繊細に、あの時を今に再現するがごとく蘇るのは――……




彼女が死に逝く悲鳴


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