その言葉の真意に戦慄し、あえなくコントローラーを落としそうになった。
「碧!」
だが彼女の視線は今、対等する相手――三爪痕に向けられる。
「碧! 碧!! 碧いぃぃッ!!」
踏み越えていけないと思いながらも、アダマスは前へ出る。碧と三爪痕が剣を交えている舞台へ。カホがそれに気がついて手を伸ばすも宙を掻き無意味に終わる。
「時は満ちた」
決意を見せる薄ら笑みをこぼして、碧は続ける。
「さあ、私に真の死を――」
高らかに宣言すると、彼女は自らの身体に躊躇いもなく深々と愛刀を突き刺した。
「っ……――!!」
アダマスにはそれが一つ一つ、まるでスローモーションにかかったかのように鮮明に映る。
彼女の元へ形振り構わず走る自分も、
そのあとを懸命に追いかけてくるカホも、
このゲームではあるはずもない血を滴らす碧も、
空中で右手を掲げ、表情ひとつ変えずそこに存在し続ける三爪痕さえも。
「……――」
放たれ怒涛と流れ込んでくる光の波。あるいは渦に侵される。そんな目が眩むなか、アダマスは確かに見てしまった。
三爪痕に微笑む、碧を……――
「――――」
『あれは…恋なのかな』
『え?』
『まぁ……生まれたばっかりだったから、そんな感情じゃなかったのかもしれない。……"期待"だったのかも』
『? どういう事?』
『ふふふ。乙女の秘密……、なんてね』
いつかの独白。そう言ってふくみ笑いのまま誤魔化されたのを思い出す。
――長い、とは言えないのはわかっている。でもこの世界で一番、碧と共にいて……向き合い続けてきたのは自分だ、と自負していた。
それは自惚れだったのだ。
君の最後は、笑顔は、僕に向けられない。
彼は、君の"期待"――"望み"を叶える?
僕は君の"望み"を知らない。
僕には"望み"を叶える力がない。
無力――今更、気がついた事ではなかった現実。
それはアダマスの心をかき乱して追い打ちをかけるように重く、のしかかった。
CC社によるメンテナンスは始り、後に世界はまた開かれる――絶望を深く根づかせて。
君はもういないのに
(まだ物語のページは続いていく)