『まもらなきゃ。ころさせはしない。わたしがまもるの。わたしのためにまもるの。かれにわたしをわすれさせないために。わたしのために。でも、あのこがいない。かれもいない。どこにいるの? あのこは。かれは。……さがさなきゃ。まもらなきゃ。わたしのために。わたしの、ために』
繰り返し繰り返し。それはまるで魔女が囁く呪文のように。
俺はそのPCに目が釘付けになっていた。喪服のような黒い……いやそれに近い群青色のドレスが目の前を過ぎていく。
「あれは過去の破片☆」
横から急に声がして驚いた――しゃべり方からしてクルフフのようだ――が確かめることもせずあのPC見つめ続ける。
「過去の破片?」
「R:1時代の重斧使いさ☆ データの底の底に散ってた欠片を回収したらここに棲み着いた☆」
「……」
心が騒ぎだした。
「――スケィス?」
お前は……何かを知っているのか?
答えはない――しかし未だに心のざわめきも消えはしない。
「……」
駆け出し、手を伸ばし細く白い腕を掴んで引き寄せる。うつろのその瞳に俺は映らなかった――自分でもおかしく感じるけど、それはなんだか気分が悪い。
「……なぁ――」
“『 』? なんで?”
“……言わない”
“あ。微妙な間。ヤだなー”
“教えてよ。なんか、曰くがあるんだー?”
誰かと誰かの会話。誰なんだろう?……なんて疑問はなく。
「名前なんていうんだ?」
「笑わない?」
“笑わない?”
同じ声色。警戒と焦り、それらを含んでいて試すような。
「“努力はする。でもそゆふーに前置きされると笑うけどねん”」
自然と出た、なんだか
「 」
「“はふん?”」
「 」
「“へえ。 なんかフツー”」
滑らかに溢れていくこの言葉たち。それらに応えるように、先ほどとは打って変わって意思のある髪と同じ白銀の瞳が向けられ、交錯される。その奥には炎が揺らめいていて――俺の
「そ、ら」
初めて聞くその優しい声色の呟き。幸せそうに微笑み、消えていく彼女へ俺は最後に「ごめん」と言った。
しらない ? わたし の ものがたり を
(忘れるなんて許されない)(光を守り、未帰還者となった彼女のことを)