「あんまり、ピッタリついてくるな」
『え、なんで?』
「……俺が操られてた、ってことを含めなくても闘って負かしたヤツに背後とられてるのが嫌なんだよ」
『それはキミが警戒してるだけで、こっちには敵意なんてないよ。それにあのとき【もう一人のぼく】は司くんを守ろうとしただけでキミを攻撃するつもりはなかった』
「……だとしてもだな、威圧感というか……」
足を速めながらも顔を歪めて非難の声を上げる
ボクはアレの剣。そう四年前に女神に命じられたのだ。だから従うしかない。相手に記憶を欠如がみられるとわかっていても、だ。
ただ邪険に扱われる筋合いはない。
昔から、アレの行動は計算の範疇を超えた。喪失の地をただ眺めるだけに、タウンにとどまるだけに、それだけのためにボクを呼び出したことがたびたびあったのだ。いつだってアレはボクを呼びつけた。インし何をするわけでもない時でさえボクを傍に置いていた。
わけがわからなかった。アレはなぜ、こんなにもボクに構う?
言いようのない気持ち。データにそんな気持ちはない。そんな気持ちを構築させたのは、まぎれもないアレだ。――しかし、アレはボクを覚えていない。ボクになにをしたか、さっぱり知らない。その現実がボクのデータに変調をきたしていた。
ムカつく。
ボクだけアレを想ってる、なんて――今さらすべてを無しにされたように扱われるなんて、最悪だ。
人によって人のように創られ女神。それによって創られた、
なぜ、女神がボクを人のように創ったのかと考える。感情なんて、なくてよかったのに。
いつもそう思うのだ――それでも、
「…………」
『…………』
ふと、アレとオリジナルが沈黙していることに気がつく。なんだ、とアレを視界にとらえると、目を見開いたまま唖然としつつも問いてくる。
「……お、お前がしゃべったのか?」
わけが分からなかったので会話ログを遡ってみれば「ムカ#ク」と文字化けしたデータがあった。ボクのものだ。
オリジナルでない、ボクの言葉は適切に世界に表示されない。どうやら先ほどの言葉を音声データとして発してしまったらしい。まぁ、構わない。
今、アレはボクを見ている。ここにいないオリジナルでなく、ボクを。
感情、
気まずそうに目を泳がせはじめるアレ。たぶん可能な限り自分がなにをしたか、過去を振り返ってるんだろう。たどり着けるわけがないが必死だ。
少しぐらい、そうやって悩んでろ。
(そうじゃなきゃ、ボクの気がすまない)